FS床版の発明
「特願平6−278346号(特開平8−113917号)」,支持部材に関する 発明「特願平8−161162号(特開平9−316826号)」は,そもそも 出願人名義変更届(乙39〜42)の特許庁への届出の手続に不備があったため, 第三者への譲渡の効力が生じていないものであるから,これをもって,前記説示を 覆すには足りない。
(イ) 控訴人は,鑑定書は,平成8年当初の単位当たりの売上高3万4400円 /m と比較すると,3万1000円/m はその10%減額に相当する,としなが2 2 らも,4000円/m という単位当たりの利益は依然確保されているとして,販2 売単価の減少を単位当たりの利益に反映させていないと主張する。
しかし,その売 上高,単位当たりの利益と,売上高の減額幅とを対比すると,生産性を向上させる ことにより変動費を圧縮したと見ることは合理的というべきであるから,控訴人の 上記主張は採用することができない。
(ウ) 控訴人は,型鋼格子床版・合成床版技術は,10種類以上に細分でき, それらが均等に市場占有をしていないとしているにもかかわらず,占有率25%と いう想定は高すぎるなどと主張する。
しかし,たとえ型鋼格子床版・合成床版技術が10種類以上に細分できるとし ても,本件において,平成10年3月当時,上記10種類以上の各技術が均等に市 場占有をしていたとすると認めるに足りる証拠はなく,前記説示のように,平成1 0年3月ころの時点において,本件特許権を,橋梁の分野における注目すべき新技 術として,FS床版事業を展開する上での中核的な技術と位置付ける見方もあり得 たことにも照らせば,占有率25%という想定が高すぎるとまではいい難い。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
エ控訴人は,被控訴人には,富士千に対する与信判断を誤り,本件特許権の担 保評価を誤り,磯畑に対する本件特許権移転登録がされた平成9年11月17日よ り前に本件質権の設定登録を確認することを怠ったために被担保債権が回収できな かった過失があるから,相当額について過失相殺がされるべきであると主張する。
しかし,本件で認められる控訴人側の過失は,本件質権設定登録を受付の順序に 従ってしなかったという内容のものであって,被控訴人と富士千との間で本件質権 設定契約が締結された後の,本件質権設定登録の申請,審査,登録の過程において 生じたものというべきである。
しかるに,富士千に対する与信判断の誤り,本件特 許権の担保評価の誤りといった点は,いずれも,本件質権設定登録の申請,審査, 登録の過程における事情に当たるとはいえないから,過失相殺すべき事情に当たる とはいえない。
また,本件質権の設定登録の未確認の点は,被控訴人が,本件質権設定登録を申 請して受け付けられてから,磯畑に対する本件特許権移転登録がされるまでの約2 か月半という期間にわたり,同登録の確認をしなかったことを取り上げるものであ る。
しかるに,そもそも受付の順序に従って登録を行うことは当然のことであるか ら,約2か月半という期間の長さを考慮しても,特許庁の職員が設定登録をすべき であったのと同様に被控訴人の側も設定登録を確認すべきであったとしてその未確 認の点に過失があるとみるのは相当でない。
また,その未確認の点が,本件質権設 定登録の申請行為そのものに瑕疵があるなど特許庁の担当職員が本件質権設定登録 を申請の受付の順序に従ってしなかった行為を誘発したといえるような事情と同視 できるともいえない。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
7 弁護士費用について
(1) 当裁判所は,本件訴訟における認容額や,その審理経過,事案の難易度そ の他本件における諸般の事情を考慮し,本件における弁護士費用としては,300 万円をもって相当であると判断する。
債務の返済金
関係証拠によれば,被告人の妻でAの母でもあるNが被告人とAの双方の預金口座を管理し,漁業活動の経費についても,その都度,AがNに伝えて現金を受け取っていたこと,Nは領収書等の伝票整理など資金の管理一切を引き受けており,それを元に被告人及びAは確定申告の手続を税理士などに依頼していたこと,本件漁船を含む被告人及びAの所有名義の漁船の保険料はNが一括して支払っているが,その保険料について被告人及びAの収入から明確に区分して支出していたものではないこと,漁船の修理代金についても,被告人とAの金銭が混同して使用されている状況が認められること,さらに本件漁船の購入代金の借金の返済資金のうち,平成14年に返済した本件漁船に係る債務の返済金400万円についてはAの収入だけでは支払いが行いうる状況にはないことなどの事実が認められ,被告人及びAの収入と支出が対応せず,両者の収支が明確に分別されておらず,むしろ,相当程度収支の混同があったというべきである。
また,本件当時,被告人とAは共に漁業を営み,各人名義の漁船を数隻ずつ所有していたこと,エンジンの調子などによって,それぞれの所有名義となっている漁船をお互いに使用し合っていたこと,一隻の漁船を使用して共同で漁に出たり,魚介類の仕分け等を共同で行うことがあったこと,漁船に使用する燃料は同一のタンクから給油していたこと,漁業に用いる倉庫,網などを共同して使用していたこと,魚介類を売却する際に,共同して運搬することがあったこと,さらに,互いにその所有名義となっていた漁船の所有名義を交換しているが,その際にも何らの精算も行われていないこと,被告人,A及びNは共に被告人とAがPという一種の屋号で共同して家業を行っているという認識であると供述していることなどの事情に照らすと,被告人及びAは,一時的な協力にとどまらず,継続的に漁業経営を協力して行っていたことが認められる。
そうすると,被告人とAがそれぞれ漁獲物を売り上げる市場を異にしており,売上金はそれぞれの名義の銀行口座に入金されていたこと,被告人及びAに対する取引業者からの請求書等の書類はそれぞれの名義で送付されていたこと,収入については一応被告人とAの口座に分けて入金されていたなどの事情を考慮しても,上記のような事情に照らすと,被告人とAの漁業経営は家業として互いに共同して行われ,漁業経営に関しては,実質的には経済的に一体のものと認められる。
(2) 控訴人の主張について
控訴人は,被控訴人の第2審における弁護士費用の請求は,本件訴訟の提起時 (平成12年2月9日)から3年以上経過した後になされたものであるとして,同 請求部分について消滅時効を援用する(国家賠償法4条,民法724条)。
しかし,本件訴訟は,特許庁の担当職員の過失により本件質権設定登録が受付の 順序に従ってされず,被控訴人が本件質権を取得することができなかったことによ り発生した損害の賠償を求めるものである。
そして,前記第2の3(3)記載のとお り,その損害額は,平成10年3月ころの本件特許権の適正な価額から回収費用を 控除した金額(それが本件債権の債権額を上回れば同債権額)というべきものであ るが,他方,本件訴訟の提起,追行のための弁護士費用の請求は,上記損害額の損 害賠償請求と全く別個の損害賠償請求となるものではなく,いずれも違法な特許庁 の担当職員の行為に基づく損害賠償請求権として一体的な関係をなすものというべ きである。
そして,本件訴訟において,上記損害(本件質権を取得することができ なかったことにより発生した損害)につき,弁護士費用の損害賠償を除外する旨が 明示されていたような事情は認められない。
そうすると,弁護士費用の請求についての消滅時効は,不法行為時からその進行 を始め,本件訴訟の提起によって中断したということができるから(民法147条 1号),本件訴訟の裁判が確定していない本件口頭弁論終結時においては,上記消 滅時効が完成したということはできない。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
8 結語
以上のとおりであるから,被控訴人の請求は,本件特許権の評価額,すなわち本 件の損害額1862万5000円に弁護士費用300万円を加えた2162万50 00円及びこれに対する不法行為の日である平成9年11月17日から支払済みま で民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があり,その余は 理由がないこととなる(なお,本件債権は,富士千が銀行取引停止処分を受けて期 限の利益を喪失した平成10年3月23日の時点で履行遅滞に陥ったものであり, そのころ,本件質権を実行することによって回収できたはずの本件債権の債権額が 本件質権を取得することができず回収ができなかったことによって,損害が現実化 したことになるが,それは損害額の認定手法の問題であり,本件の不法行為に基づ く損害賠償債権の遅延損害金発生の始期は不法行為日である平成9年11月17日 であることに変りはない。)。
したがって,控訴人の本件控訴は,前記第1の1(2)の第1審判決を,主文第1 項の限度(2162万5000円及びこれに対する年5分の割合による遅延損害 金)で認容する内容に変更(減額)する限度で理由があるが,その余は理由がない こととなり,また,被控訴人の本件附帯控訴は理由がないこととなる。
なお,訴訟 費用の負担については,本件訴訟における認容額,本件訴訟が第1次控訴審の判決 の誤りによって特異な経過をたどっていること,鑑定採用に至る経緯,その他本件 における一切の事情を考慮し,公平の見地から,本件の訴え提起の手数料の17分 の1を控訴人の負担とし,17分の16を被控訴人の負担とし,その余の訴訟費用 はすべて各自の負担とするのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
ア法は,源泉徴収義務者本人が第三者名義で源泉所得税を徴収納付するこ とを予定しておらず,外観上一見して源泉徴収義務者本人の通称ないし別 名と判断できるような例外的な場合でない限り,第三者名義による徴収納 付は,源泉徴収義務者本人の徴収納付としての法的効果は生じない。
すなわち,租税法は,正当な納税義務者が正当な手続で納税することを 期待し要求しているのであって,だれがどのような形で納税しようと納税 に見合うものがあれば,それで納税義務の履行があったとか,国の財政権 の侵害がないなどと言える筋合いのものではない。
また,他人の名前で納 税するのは,通常脱税目的以外の何者でもなく,これを承認して公法上の 法的効果を付与する合理的理由も全くない。
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